東京高等裁判所 昭和31年(う)1680号 判決
被告人 金文賛
〔抄 録〕
ところで、記録によれば被告人は昭和三〇年九月二〇日附大森簡易裁判所裁判官菊池誠の発した逮捕状によつて、同月二一日午後五時二五分東京都大田区大森六丁目二五六八番地先路上において逮捕され、同月二三日に同日附同裁判官の発した勾留状によつて大森警察署留置場に勾留されたことを知り得る。弁護人の論旨第一点は、被告人は昭和三〇年八月三一日に逮捕され、同年九月二〇日まで右留置場に勾留されていた事実があるに拘らず、これに関する逮捕状並びに勾留状の見るべきものがないので、原審の本件審理手続は違法であり、違憲であるというのであるが、仮りにその主張にかかる逮捕並びに勾留の事実があり、これに関する逮捕状並びに勾留状の見るべきものがなかつたとしても、ただ、それだけで該逮捕並びに勾留が違法であつたとか、違憲であつたとかいうことにはならず、況んや原審の本件に関する審理手続が違法乃至は違憲であつたというべき謂はれはない。また、仮りに百歩を譲り、逮捕勾留が刑訴法並びに憲法の定める所に従つてなされなかつたとしても、それに対する救済を原判決に対する控訴によつて求めようとするのは、まつたく、筋違いであつて、この意味からいつても、該論旨はとうてい採用するに由ないのであるから、該論旨は理由ないものとして排斥するの外はない。
(中野 尾後貫 堀真)